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札幌高等裁判所 平成11年(ネ)268号 判決 1999年12月16日

北海道名寄市<以下省略>

控訴人

右訴訟代理人弁護士

荻野一郎

東京都中央区<以下省略>

被控訴人

株式会社アサヒトラスト

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

岩城弘侑

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

二  被控訴人は、控訴人に対し、金三七八万二六一三円及びこれに対する平成九年一二月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  控訴人のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、第一、二審を通じて五分し、その一を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の負担とする。

五  この判決は、第二項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を次のとおり変更する。

2  被控訴人は、控訴人に対し、金四六九万〇七六六円及びこれに対する平成九年一二月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

第二事案の概要

原判決の「事実及び理由」第二に記載のとおりであるから、これを引用する。

第三当裁判所の判断

一  争点1(不法行為の成否)について

原判決の「事実及び理由」第三の一における説示を引用する(ただし、原判決一四頁五行目から六行目にかけての「六〇万円であれば捨てても構わないと思い」を「六〇万円を預託して」に改め、同二一頁八行目の「管理担当班」の次に「の責任者」を加える。)。

二  争点2(損害額)について

原判決の「事実及び理由」第三の二における説示を引用する(ただし、原判決三三頁七行目の「の合計額」を「及び取引税・消費税一四万三八六六円の合計額」に改める。)。

三  争点3(過失相殺)について

控訴人は、本件取引を開始する以前には商品先物取引の経験を有していなかったが、陸軍航空飛行学校を卒業した後、陸軍に勤務し、終戦後は製材所を経営し、また、陸上自衛隊に勤務して補償賠償業務を担当するなどの社会的経験があったから、控訴人が本件取引の開始当時七八歳と高齢であったことを考慮しても、商品先物取引に対する理解力、判断力がなかったとはいえないこと、控訴人は、被控訴人の担当者から、商品先物取引の仕組みや取引に関する禁止事項、商品先物取引の危険性を説明した「商品先物取引委託のガイド」や受託契約準則を交付されるとともに、商品先物取引の概略の内容につき説明を受けて、本件取引を開始したものであり、本件取引がハイリスク・ハイリターンの投機的取引であることは理解していたものと考えられること、控訴人は、被控訴人から次々と追証拠金の支払を求められたため心配になって、平成九年九月ころから数回、弁護士による法律相談を受けているが、他方、本件取引を開始したときから北海道新聞に掲載される金の値動きの欄に毎日目を通していて、同月末ころ、被控訴人から金の建玉を仕切ってはどうかとの連絡を受けたとき、金の価額の上昇を予想し、自らの意思で被控訴人に建玉の仕切りを指示したこともあり、これらによると、控訴人が、次々と追証拠金の支払を求められて本件取引を終了させたい意向を有するに至ったことは窺えるが、そのことを被控訴人の担当者に明確に伝えることなく、被控訴人の担当者から勧められるまま本件取引を継続した面があることは否定できないことなどの諸事情を考慮すると、控訴人にも、本件取引による損害の発生について過失があるものといわざるを得ない。そして、被控訴人の担当者による前記認定の新規委託者保護義務違反及び無意味な反復売買の態様を併せ考慮すると、控訴人の過失割合は二割と認めるのが相当である。

したがって、被控訴人が控訴人に対し支払うべき損害賠償金は三四三万二六一三円となる。

四  弁護士費用

本件訴訟の内容、審理経過、認容額等を考慮すると、本件の不法行為と相当因果関係を有するものとして被控訴人に賠償を求めうる弁護士費用の額は三五万円とするのが相当である。

五  結論

以上によれば、控訴人の本訴請求は、金三七八万二六一三円及びこれに対する不法行為の終了した日である平成九年一二月一一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は失当である。

よって、これと異なる原判決を右のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六七条二項、六四条、六一条を、仮執行の宣言につき同法三一〇条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 濵崎浩一 裁判官 竹内純一 裁判官 石井浩)

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